全てを確信する一瞬…
[Close to the Edge
〜 YES]
僕なんか、YESの聞き手としては大変に新しい方である。今までにもチラチラと聞いて(或いは、聞かされて)はきたものの、ジックリと聞きこむだけの余裕は未だに見出せていない。…その上、初めて自分で入手したアルパムが最新作というのだから、後は推して知るべしである。
しかし、今までに自分から欲しいと思わなかったとはいわない。それどころか長い間、買うための機会を待ち続けていたアルバムだってあるのだ。…今回ようやく手にいれたそのアルバム… 「Close
to the Edge」である。
このアルパム以後、YESは「Tales
from Topographic
Ocean」そして「Relayer」という2枚のアルバムを経て、今回の最新作「Going
for the
One」へと雪崩こんで行くのだが、その経過作をじっくりと聞いていない僕にとって、この変遷は殆んど理解し難い。…確かに何かが違うのだ。勿論、Rick
Wakemanの脱退と再加入というのは一つの大きな結節点には違いないのだが、その他にはドラマーがBill
BrufordからAlan
Whiteに変わったくらいだから、取り立てて大きな変動はない筈なのだ。にも拘らず、1972年から77年という5年間に、一体彼らは何を振り落とし、そして何を得てきたというのだろう?
…その鍵は、すべてこのアルバムにあるような気がしてならない。
…A面全部を費やす表題作「Close to
the Edge」…
そこに在るのは紛れもなく5年前の彼らだ。荒削りな、さながら鉈ではつったごとき音作り…それでいて、決してラフな音ではない。それどころか、余りにもデリケートに積み上げられ、表題が如実に示すごとく、完璧に組み上がったその一瞬を、一歩間違えば奈落に崩れ落ちるその一瞬を、このアルバムは正確に映し出している。
だが、ひょっとしたら… 彼らの本音はここにはないのだ。B面に収められた2曲「And
You And I」、「Siberian
Khatru」は、まるで合わせ鏡のように、彼らの音の陰にあるものを写し出す。…それは、言葉に出されていない分だけ重い。(まだ歌詞の全部に目を通した訳ではないので…大体、この歌詞カードの字が読めん!)その、目に見えない障壁を取り払う事…それは、信じられないほど緻密な作業を要する。…だが、聞き手はそれをする必要がない。恐らくは…彼らがこの後に出していく3枚のアルバムが、その解答となっていたに違いないのだ。彼らメンバーたちには、全てが確信されていたに違いないのである。
多分に趣味的な問題だが、やはり「And
You And I」が良い。Jon
Andersonが叩きつける、このヴォーカルの鮮やかさに取り付かれた者は、決してYESからは離れられまい。それほどまでに、彼の声…そして、彼が作り出す音楽世界は素晴らしいものを隠している。
今回買ったのは英国盤…恐ろしいくらい、音が良い。大体スクラッチがろくに入っていないのである。
(1978.1.17)