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瑞穂運動場東駅から南へ歩いて7分、弥富通3丁目交差点の東50mのところにあるかのうクリニック。花壇にはいつも四季折々の花が咲いており、待合室に入ると、きれいな魚たちが水槽のの中をゆったりと泳いでいます。診察室には先生の娘さんが描いたというバーバーパパの絵もあり、どれも明るくて優しい院長先生の人柄を表していますね。「小さいクリニックには、小さいなりの良さがあるんですよ」と柔らかな口調で話される、そんな狩野先生のところにちょっとおじゃまして、今までの経歴や医療に対する考え方、趣味の話などをお聞きしました。

  

玄関先のお花は素敵ですね、先生がお手入れされていると聞きましたが。

ええ、植え替えも水遣りも草取りも、全部僕がやっていますよ。建物ができた当初はサツキや観葉植物が植えてあったんですが、夏の暑さで枯れちゃいましてね。とりあえず、そこに花を植えてみたらすごく綺麗だったので、だんだんガーデニングにはまり込んで行きました。そのうち枯れてない植物も全部花に変えてしまって、結局今の感じになったんですよ。
だいたい4月と11月ぐらいに植え替えをして、冬はビオラ・パンジー・ジュリアン、夏はベゴニア・ペチュニア・インパチェンスなどを主体にしています。私が花の世話をしていると、歩道を歩いていた患者さんが声を掛けてくることがよくあるんです。一緒に花の名前や育て方の話をしたりして楽しいですね。ただ、なかなか園芸の仕事がはかどりませんが(笑)。

若い頃は何科のお医者さんでしたか、そして開業されたきっかけは?

大学卒業後、最初は一般外科・消化器外科をメインにやっていました。当時は、消化器外科・呼吸器外科・心臓外科などという風に分かれていなかったので、いろいろな手術を経験出来て面白かったですね。しだいに心臓外科の数学的な面白さに惹かれ、その専門医となって毎日手術室とICUを行き来する生活をしていました。
ところが、ある日の手術中に手が痺れるようになってしまったんです。整形外科に行ったら頚椎ヘルニアだという診断で、長時間手術をしちゃいけないと言われてしまいました。内科医に転向することも考えたのですが、その時ちょうど実家の隣の土地が売りに出ていたので、思い切って開業医になりました。それまでは一生勤務医のつもりでいましたから、自分でもびっくりです。

心臓外科医から開業医に転身する時、不安はありせんでしたか?

心臓外科医は、狭心症など生活習慣病が原因となって起こる病気を取り扱っていますから、高血圧、コレステロール、糖尿病などは、いわば専門領域なんですよ。それに、若い頃は消化器外科をやっていた時代もあるし、大学の医局は胸部外科ですから呼吸器外科もやっていたし、赤ちゃんの心臓手術もやっていたので子どもの診療も得意です。
それに、外科医と聞くと「手術室にこもっている技術屋」を想像する方もいらっしゃるでしょうが、どちらかと言えば、もともと僕は外来で患者さんとお話することが好きなタイプの医者でしたね。ですから、開業医に転身することに不安感は全くなかったです。経営や借金の方は、ちょっとだけ不安がありましたが(笑)。

クリニックにはどんな患者さんが多いのですか?

高血圧、糖尿病、高脂血症など、生活習慣病と呼ばれる病気の方が、かなりの部分を占めていますね。循環器が専門ですから、不整脈、狭心症、心不全の患者さんもたくさんいらっしゃいます。また、心臓手術後、不整脈・狭心症のカテーテル手術後などの、病院から紹介された患者さんのフォローも行っていますよ。
もちろん地域の開業医ですから、赤ちゃんや子供の診察、風邪や腹痛、膝や腰が痛い方まで何でも診ています。さすがに産科は無理ですけどね(笑)とにかく、専門であろうとなかろうと困っている患者さんは全部診て、難しそうだなと思ったら中途半端に引きずったりせずに早く大きな病院を紹介する、それが僕の基本的なポリシーなんです。

診療にあたって、どんなことを大切にしているのですか。

スタンダードな治療を心がける、健康を保つ薬と症状を抑える薬を分けて考える、薬はなるべく少なくシンプルに、この3つをモットーにしています。
スタンダードな治療というのは、昔からある古い治療という意味じゃないんですよ。学会などが毎年発表している「これからはこういう風にやって行こう」という、新しい臨床研究を基にした「標準的な治療方針」のことなんです。自分の経験というのも確かに大事ですが、自己流の治療ばかりやっていては独善的になっちゃいますよね。病院や大学の大規模な治療研究を参考にした方が、やはりより良い治療ができると思うんです。
ただ、病気の数は山のようにありますし、標準的な治療方針は少しずつ変化してゆきます。ちゃんと勉強していないと浦島太郎になってしまいますから、研究会や講演会には積極的に参加していますよ。

健康を保つ薬と症状を抑える薬を分けて考えるというのは、どういうことなのでしょうか?

血圧・糖尿病・コレステロールなどの薬は、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を防ぐために飲んで頂いているわけですから、自覚的に何もなくても寿命を延ばすために飲んでおいた方が良いですよね。それに対し、痛み・痒み・花粉症や、めまい・しびれ・眠れないなどの薬は自覚症状を抑えるのが主目的で、止めても寿命には関係ありませんから、自分の感じで飲むかどうかは考えれば良いんです。
なかなか年齢の進んだ患者さんは説明しても忘れてしまうので、どういう考え方で僕が薬を出したのか、メモ用紙に書いて渡すことも多いです。この薬は大事だからちゃんと飲んでね、こっちの薬は症状に合わせて適当で良いからね、なんていう話を診察室で毎日のようにやっています。

薬はなるべく少なくシンプルに、というのはうれしい話ですね。

毎日飲まなければいけないのなら、薬は少ない方が良いに決まっていますよね。病気の数が多い場合は難しいですが、なるべく必要性が高い薬だけにして、全体の数は減らすよう心がけています。1錠の中に2種類の薬が入っている錠剤も積極的に使っていますよ。
また、1日に1回・2回・3回とか食前・食後とか、薬の飲み方が複雑だとどうしても飲み忘れが多くなりやすいですよね。特に年齢が進んだ方はついて行けませんよ。ですから、できる限り朝1回、または1日2回朝夕、この2つの飲み方にそろえるように努力しています。面倒だから飲まなくなったでは元も子もないですからね。

診察の上で、何か気を付けていることはありますか?

クリニックには、血圧、コレステロール、糖尿病などの患者さんが多いのですが、そういう患者さんはやはり生活習慣の改善が大事ですよね。ただ、単に塩分・運動・カロリーの数値ばかり言っても、患者さんの頭には残りません。どんな風に料理を作るのか、どんな風に運動するのか、どんな風に奥さんに頼むのか、どうやれば続けられるのか、そういった具体的なことを説明することが大切だと考えています。まあ、料理の研究までやらないといけないので、僕も忙しいです(笑)。
患者さんも顔なじみになってくると「整形外科で注射をやってもらっているけど、これってどのくらい効くの?」とか「眼科でこんな説明を受けたけど、先生はどう思う?」というような事を聞いてくる方がよくいるんですよ。正直、僕に聞かれても困るんですが、気軽に質問しやすい医者だと思われていることは、とてもうれしいことですね。そんな患者さんの期待に応えられるように、専門以外の科の勉強も怠らないように頑張っています。

最後に、先生の趣味の話をお聞かせください。

趣味は、若い頃からずっと音楽系のものをやっていました。小学校の頃にちょっとだけピアノ教室、中学・高校のクラブ活動は男声合唱団、その頃から家でギターの練習にも励み、大学ではフォークバンドの活動、社会人になってもJ-POPのバンド活動をやっていました。開業して10年ぐらいは、ちょっとおとなしくしていましたけどね(笑)。
今でも医師会の仲間でバンドを作って、介護フェスタなどのイベントで演奏を行っていますよ。なかなか集まって練習する時間がないので簡単な曲しかやりませんが、やっぱり楽しいですね。楽器の担当は、主に横笛とギター、たまにシンセサイザーぐらいかな。

先生は結構多趣味なんですね。

音楽系の趣味は他にもいろいろやっていましてね、学生の頃から、近くにある中根東八幡社の秋祭りで神楽笛を吹いていました。師匠から「あとは任せたから」と言われてからは、尾張南部地域の伝統音楽の研究にのめり込み、失われそうになった曲を楽譜化したりする活動もやっています。山車の中や巫女さんの後ろで笛を吹いたりもしているんですよ。
また、最初にお話したガーデニング以外にも、クリニックの3階ベランダでは、プランターで野菜を作っています。夏はキュウリ・トマト・ナス・ピーマン・オクラなど、冬は玉ねぎ・人参・カブぐらいかな。完全無農薬だし、自分で作ったと思うとやっぱり美味しいですね。

先生が地域の患者さんたちからすごく慕われているんだなと感じます。

「アットホームな雰囲気でハイレベルな医療を」というのが、僕の目指しているところなんです。たまに話し込んでなかなか帰らない方がいますけど、時間が許せばちゃんとお付き合いしていますよ。話を聞いてあげるだけで治ってしまうこともよくありますからね。病気だけでなく悩みや不安感などもフォローしてあげられたらいいなって、いつも考えているんです。
ただ、自分の専門分野の医療に関しては、大きな病院と同レベルの外来診療をやりたいと思っているんです。大きな検査が必要になったら病院にお願いして、帰ってきたらまた僕がフォローする、重症化したり手術が必要になったら病院にお願いして、退院したらまた僕がフォローする、そんな病院とクリニックのシームレスな関係が出来たらいいなと考えています。