かわさき    三百    さわぎ    春駒    ヤッチク    郡上甚句

古調かわさき   猫の子   まつさか   



げんげんばらばら


げんげんばらばら何事じゃ

親も無いが子も無いが

(アドッコイショ)

一人貰うた男の児

鷹に取られて今日七日

(アドッコイショ)

七日と思えば四十九日

四十九日の墓まいり

叔母所へ一寸寄りて

(アドッコイショ)

羽織と袴を貸しとくれ

有るもの無いとて貸せなんだ

(アドッコイショ)

おっぱら立ちや腹立ちや

腹立ちィ川へ水汲みに

(アドッコイショ)

上ではとんびがつつくやら

下ではからすがつつくやら

助けておくれよ長兵さん

(アドッコイショ)

助けてあげるが何くれる

千でも万でも上げまする

(イヤマカ サッサイ ヤットコセ)

(以下返し言葉略)


私しゃ紀の国みかんの性よ

青い内から見染められ

赤くなるのを待ち兼ねて

かき落とされて拾われて

小さな箱へと入れられて

千石船に乗せられて

肴や店にて晒されて

近所あたりの子供衆に

一文二文と買い取られ

爪たてられて皮むかれ

あまいかすいかと味見られ

私ほど因果な物はない



駕籠で行くのはお軽じゃないか

妾しゃあ売られて行くわいな

主の為ならいとやせぬ

しのび泣く音は加茂川か

花のぎおんは涙雨

金が仇の世の中か

縞の財布に五十両

先へとぼとぼ与市兵衛

後からつけ行く定九郎

提灯バッサリやみの中

山崎街道の夜の風

勘平鉄砲は二つ玉



びんのほつれをかき上げ乍ら

涙でうるむふるい声

妾しゃお前があるが故

ほうばい衆や親方に

いらぬ気兼ねやゆう苦労

それもいとわず忍び逢い

無理に工面もしようもの

横に車を押さずとも

嫌ならいやじゃと云やしゃんせ

相談づくの事なれば

切れても愛想はつかしゃせぬ

酒じゃあるまいその無理は

外に云わせる人がある



十四の春から通わせ居いて

今更嫌とは何事じゃ

東が切りょが夜が明けようが

お寺の坊さん鐘つこうが

向かいのでっちが庭はこが

となりのばあさん火を焚こが

枕屏風に陽はさそが

家から親達ゃ連れにこが

其のわけ聞かねばいのきゃせぬ



郡上八幡かいしょう社

十七・八の小娘が

さらしの手拭い肩にかけ

小ぬか袋を手にもちて

風呂やは何処よと尋ねたら

風呂屋の番頭の云う事にゃ

風呂は只今抜きました

抜かれた貴女は良いけれど

抜かれた私の身が立たぬ



器量がよいとてけん高ぶるな

男がようて金持ちで

それで女が惚れるなら

奥州仙台陸羽の守

陸羽の守の若殿に

なぜに高尾がほれなんだ



目次へ戻る