斜めに吹く笛

斜めに吹く笛 H30年


若い頃から神社のお祭りで神楽笛を吹いていましたが、50歳を過ぎてから趣味が高じて世界中の「笛」を集めるようになりました。骨董と違って集めて眺めているだけじゃなく、演奏する楽しみがあるので奥が深いです。笛は、大きく分けると縦に吹く笛・横に吹く笛・斜めに吹く笛があります。縦に吹く笛は、フォロクローレに使われるケーナや、日本の尺八が有名ですね。横に吹く笛は、ヨーロッパのフルート、インドのバンスリ、中国の笛子と世界中にたくさんあり、日本でもお囃子笛、龍笛、能管などいろいろあります。

ただ、斜めに吹く笛というのは、なかなか皆さん知らないでしょう。吹き口の形だけでなく吹き方そのものがケーナやフルートとは全く違い、笛を斜めに構えて、唇を口笛を吹く程度に丸めて吹き口をそっと吹くものなのです。シンプルな構造なのですが、澄み切った高音から渋い低音まで音域も広いです。音階が半音ずつなのがこの斜めの笛の特徴で、ドからレなど音階が1音上がるときには、指孔を2つ同時に開ける必要があります。縦の笛や横の笛とかなり指使いが異なりますが、この笛がある地域は半音の多いスケールを使っていることが多く、そのことが関係しているのかもしれません。

この斜めの笛は、ブルガリアの「カヴァル」、トルコの「ネイ」、アラブ・ペルシアの「ナーイ」、エジプトの「カワラ」などが有名ですが、西アジア、東ヨーロッパからアフリカ北部まで、広い地域で使われています。歴史的には古代のペルシア音楽で使われた葦を材料とする「ナーイ」が起源と考えられており、「ナーイ」は、アラビア語・ペルシア語で葦を意味します。アンサンブルの中ではメロディー楽器として使われ、アラビアンナイトでも「ナーイ」は叙情的なシーンでしばしば登場します。

家にも何本かこの斜めに吹く笛がありますが、ペルシアやアラビアの宮廷をイメージしたり、東ヨーロッパの羊飼いの情景をイメージしたりして、練習に励んでいます。音を出すこと自体も難しいのですが、全部半音階の指孔のため指使いがもっと問題で、普通の横笛を吹いている人間が吹こうとすると、頭がごちゃごちゃになりそうです。