名古屋市瑞穂区 かのうクリニック 予防接種について

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小児の感染症

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)について

<病気のあらまし>
発熱とほぼ同時に耳の下側が腫れてきて、だんだん腫れがひどくなり、痛みも増してきます。60〜70%は両側が腫れますが、片方のこともあります。腫れるのは、耳下腺といって唾を出すところですが、唾を出すところは耳下腺以外に顎下腺(あごの下)・舌下腺(舌の下)もあります。おたふくかぜでは、耳下腺も顎下腺も(舌下腺も)腫れます。潜伏期間は比較的長いほうに属し、およそ3週間です。

おたふくかぜは、予防接種のおかげで激減してきており、あまり見ない病気になってしまいました。ただ、厳密に検査すれば、10〜20%は軽い無菌性髄膜炎になっていると言われており、それほど軽い病気とは考えないでください。2〜3%は無菌性髄膜炎で入院治療になりますし、厚生労働省の統計では、以前は毎年数十人の死亡例が報告されていました。

大人になってから男子がおたふくかぜになると、5〜10%ぐらいに睾丸炎や副睾丸炎が起こります。これは男子不妊の原因になると言われていますが、人間には副睾丸炎は右と左と2つあるので、実際に不妊になることはそれほど多くはないと考えられています。またそれ以外にも、膵炎・卵巣炎・難聴などの合併症もあり、女性だったら大丈夫というわけではありません。特に難聴は数百人に一人ぐらいの割合で起こり、学童期の後天性難聴のかなりの部分が、おたふくかぜが原因だと推定されています。

なお、耳下腺炎は、おたふくかぜウイルス以外にもいろいろな原因で起きることがあります。おたふくかぜウイルス以外のウイルスによるもの、細菌感染によるもの、反復性耳下腺炎といって原因のよくわからないものなど、いろいろあって、必ずしもきちんと区別はつきません。ただし、おたふくかぜウイルスによる耳下腺炎は、基本的に一生に一度しかかかりません。

<治療・合併症>
おたふくかぜに対する抗ウイルス薬はありませんので、治療は熱と痛みに対する対症療法になります。通常、鎮痛解熱剤を処方しますが、痛みが強ければ、熱がなくてもそのくすりを飲んでかまいません。あとは、腫れているところを氷で冷やすか、冷えピタでも貼っておくということになります。シップや塗り薬は、かぶれることがあるので、やらないほうが良いと私は思います。

食事のときには特に痛みが強いのですが、その理由は2つあります。ひとつは、口を大きく開けると、顎の関節が耳下腺を刺激して痛いというものです。そのため、口をなるべく開けずにすむものをあげてください。とりあえず、ストローで牛乳を飲むのが、一番簡単です。もうひとつは、耳下腺は唾を出すところですので、からいものやすっぱいものを口に入れると、唾を出そうと耳下腺が収縮するために痛いというものです。そのため、なるべく味のうすいものをあげてください。要するに、味噌汁とかオレンジジュースなどはよくないということです。

合併症としては、無菌性髄膜炎が一番心配なので、頭痛とか吐き気には十分注意してください。

<予防接種>
おたふくかぜ予防接種は、1回接種の有効率は70〜80%ぐらいとやや低いです。しかも、おたふくかぜウイルス以外の原因でも耳下腺炎になりますので、感覚的な有効率は60%ぐらいの感じでしょうか。厚生労働省の考え方は、1回接種しておけば、かかることはあっても、無菌性髄膜炎などの重大な合併症の頻度はかなり減らせる、というもので、全くかからないことを目指しているわけではありません。

また、おたふくかぜの予防接種のせいで、無菌性髄膜炎になることが数千分の一程度あると言われています。このマイナス点のせいで、おたふくかぜの予防接種を躊躇されるお母さんもいらっしゃるかもしれません。ただし、実際のおたふくかぜにかかると、3%ぐらいは明らかな髄膜炎になるということも考慮に入れてください。

日本ではおたふくかぜ予防接種は任意接種(名古屋市は公費で半額補助)になっていますが、大部分の国では定期接種(しかも2回接種)になっているワクチンです。おたふくかぜはそんなに軽い病気ではなく、合併症の多い危険な病気であるということも考慮に入れて、注射をするかどうか決めてください。

また、日本では基本的に1回接種となっていますが、効果や必要性を考えると、諸外国と同じように2回接種の方が望ましいと考えています。